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ハンググライディング教本 (B級練習生技能課程)



B級練習生技能課程
B1 目標
B2 練習生
B3 練習
B4 科目数
B5-1 フライトプラン
B5-2 機材の点検と調整
B5-3 フックアウトの防止
B5-4 飛行準備・周囲警戒・テイクオフ
B5-5 スピードコントロール
B5-6 90 度旋回
B5-7 左右連続旋回
B5-8 ランディングアプローチ
B5-9 ファイナルアプローチ
B6-1 機体各部の機能と取扱い
B6-2 滑空速度
B6-3 旋回のしくみ
B6-4 風
B6-5 風の測定
B6-6 地形による風の変化
B6-7 安定した風と不安定な風
B7 B 級検定
B1 目標
B 級練習生技能証の取得
単独にてハンググライダーを操縦し、左 90 度旋回および右 90 度旋回を行う技能及び指定された着陸地帯に着陸を行う技能を修得する。
B2 練習生
ハンググライダーA 級技能証を有
する者.
B3 練習
成功飛行回数 20 回以上、合計飛行時間は特に制限なし.
B4 科目数
実技 9 科目
学科 7 科目
B5-1 フライトプラン

ポイント

・インストラクターの指示の背景にある判断の基準を理解する.
・自分でフライトプランを立てる練習を積む.

直線飛行の A 級課程と比べて B 級課程では離陸地点が斜面の上方へ移動し,飛行の高度差が大きくなる.テイクオフ後は左右の旋回練習に取り組むことになる.フライトの可否やテイクオフ地点の選択,フライトの内容についてはインストラクターの指示に従うことはもちろんだが,インストラクターの説明を聞いて指示の根拠を良く理解し,自分でフライトプランを立ててみる.

気象条件を把握する

風向・風速をテイクオフとランディングの吹き流しで確認する.風向は左右各 45 度以内の向かい風であることが望ましい.風速の上限については一概には言えない.同じ風速でも例えば海岸の練習場と山間部の練習場とでは,風の安定度が異なるからである.テイクオフについては機体を安定して構えられるかどうかが一応の目安となる.その他に周囲の障害物によるローターの影響など個々の練習場に特有の条件があるが,一般には向かい風が強くなると次のような現象が起こる.

・テイクオフの助走距離は短くなり,離陸こ伴う高度ロスは小さくなる.
・斜面での向かい風は上昇風となるので,飛行中の沈下率は小さくなる.
・向かい風で飛行する場合には対地速度が遅くなる.
・旋回において機体が風下へ流され,意図した進路を取ることが難しくなる.
・風が強いと木立や建物などの障害物によるローターが強くなる.

テイクオフ地点を決定する

練習場では着陸に適した場所が決まっている.その範囲に安全に着陸できるように,練習場の立地条件,風の条件や練習生の技能レベルを考慮してインストラクターがテイクオフ地点や旋回位置を指示する.しかし,ただ指示に従うだけなく,どのような点を考慮してそれらを決定するのかを理解しよう.

フライトパスのイメージ

インストラクターからフライトについての説明を受けたら,テイクオフ地点に立って,自分がこれから行うフライトのイメージを頭の中に描いてみる.テイクオフし,どこで旋回を始め,どこで直線飛行に戻すか,といったことである.予定位置で旋回を行うには,どこで体重移動を始めるかもイメージしてみる.このような飛行経路のことをフライトパスと呼ぶ.

B5-2 機材の点検と調整

ポイント

・機体及び機材の点検方法と基本的な調整方法を覚える.

機体のプレフライトチェックは一定の順番にしたがって行うように習慣づけることが大切だ.機体やハーネスの基本的な調整についても理解しておこう.

プレフライトチェックのポイント 1.フライングワイヤーのコントロールバーへの取り付け部のシャックル (U 字形の取り付け金具) を点検し,ワイヤーによじれ (キンク) や傷みがないかどうかを点検する.また,フライングワイヤー全般をチェックし,ワイヤーのビニールの被覆が破れている個所については,撚り線に断線がないかどうかをチェックする.

 

2.ダウンチューブのキールへの取り付け部分のボルト/ ナットに緩みがないかどうかをチェックする.
  •   
  • 3.スパーやクロスバーに凹みや傷がないかどうかを点検する.また,左右のクロスバーの結合部に異常がないかどうかをチェックする.セールの外に露出している部分だけでなく,ノーズのセールの切れ目やファスナーからセールの内側ものぞいて,スパーやクロスバーに損傷がないか,左右のバランスにおかしなところがないかどうかをチェックする.
    [クロスバーの結合部のイラスト追加]
    4.機体の前方に立ってノーズワイヤーを持って機体を起こし,翼の上面を眺める.左右の翼を見比べてバランスの崩れていないかどうかを確認する.ラフラインがバテンやキングポストに引っ掛かっていないかどうかを確認する.
    5.キールを地面につけた状態で機体の回りを時計回りに一巡しながら,まず左翼のリーディングエッジのセールに損傷がないかどうかを確認する.同時に,スパーの前縁に凹みがないかどうかをリーディングエッジに触ってみて確認する.スパーとクロスバーの結合部に異状がないか,セールのジッパーを開けて確認する.セールの翼端がスパーに正しく固定されているかどうか,ウォッシュアウトリミッタが正しく装着されているかどうかを確認する.
    6.トレーリングエッジにそって歩きながらバテンが正しく止められているかどうか,バテンを止めているひもが切れかかっていないかどうかをチェックする.また,セールに破れがないことを確認する.
     
    7.リアワイヤーがキールに正しく固定されているかどうかを確認する.また,ランディングワイヤー全体を眺めて異常がないかどうかを確認する.
    8.右翼について,バテン,ウォッシュアウトリミッタ,セール及び翌端の異常の有無を左翼と同様に確認する.
    9.右翼の前方にまわって,右翼のリーディングエッジのセールとスパーの凹みをチェックする.プレフライトチェックは習慣として行うようにすることが事故を未然に防ぐ上で不可欠である.また,クラッシュした後は特に入念な点検を行わなけれならない.

    機体の調整

    現在のハンググライダーは出荷時点で正しく調整がなされている限り,再調整の必要はほとんどない.ただし,長期間の使用においてはセールの伸びなどのために飛行特性が当初の状態から変わってしまうことがあり,それらを当初の状態に戻すためにいくつかの調整個所がある.例をあげると,スイングラインの取り付け位置,バテンを止めているひもの張力,セールの張り,バテン形状などである.ただし,これらの調整は機体の飛行特性に影響を及ぼすので必ずインストラクターの指導のもとに行わなければならない.

    ハーネスのチェックと調整

    着用前に,ラインにほつれや目立つけば立ちがないかどうかを確認する.生地に破れがないかどうかを確認する.

    ハーネスを新たに購入した時は,身体に合わせてハーネスの調整を行う必要がある.スクールの講習ではスクールのハーネスを使用することも多いが,その場合も使用する前にハーネスを再調整しなければならない.ハーネスの調整は一人ではできないので,インストラクターや他のフライヤーに手伝ってもらう.

    また,プローン姿勢でシミュレータなどにぶら下がった状態で,インストラクターや他のフライヤーにハーネスのラインの張り具合をチェックしてもらう.すべてのラインが等しい張力となるようにラインの長さを調整する.ぶら下がった状態をしばらく続けて,肩や腰などに苦しいところがあればラインを再調整する.

    ライザー以外のラインは一般にロープが使用されている.これらのロープはもやい結びという結び方でハーネスに取り付けられている.もやい結びはもともと船を係留するロープの結び方であり,引っ張り力に対して解けにくく,解きたい時に簡単に解けるのが特徴である.もやい結びはハーネスに限らずハンググライディングでは良く使われるので覚えておこう.

    ラインの調整とは別に,実際に飛行する機体からハーネスを着てプローン姿勢でぶら下がってみて,吊り下げ高さを調整することも必要だ.吊り下げ高さはベースチューブとハーネスとの間にこぶし一つ分くらいの隙間ができる程度が好ましい.高さの調節はハーネスのラインの長さを変えるするのではなく,スイングラインの長さを変えることで行う.機体によってコントロールバーの寸法が異なるので,ハーネスの吊り下げ高さの調整はフライトに使用する機体を用いて行わなければ意味がない.

    B5-3 フックアウトの防止

    ポイント

    ・テイクオフ前のカラビナのチェックを習慣づける.

    ハンググライディングの事故においては,フックアウト,すなわちカラビナの掛け忘れによる事故が高い比率を占める.フックアウトでを起こすと,機体が空中に浮かんだ後にパイロットが機体から落下して大怪我をしたり死亡事故に至ることが多い.フックアウトは飛行技術や経験に関係なく誰にでも起こり得る反面,ちょっとした注意で防止することができる.フックアウトを防止するにはテイクオフ前に必ずハングチェックを行い,さらに離陸地点で機体を構える直前にファイナルチェックを行うことが大切である.B 級を取得すると高々度の単独飛行に進むが,それ以前からこうした複数段階のチェックを行う習慣を身につけておかなければならない.

    B5-4 飛行準備・周囲警戒・テイクオフ

    ポイント

    A 級で学んだ技術を完全に身につける.

    飛行準備を行い,周囲の安全を確認した後にテイクオフすることは既に A 級課程で学んだことであり,B 級課程においても基本的に変わりはないが,すべてを完全に行えるようにする.

    B5-5 スピードコントロール

    ポイント

    ・トリムスピードを中心とする一定範囲で滑空速度をコントロールする.
    ・ニュートラルポジションから加速した場合と減速した場合の速度の変化を,身体で感じ取る.

    直線飛行においてベースチューブをニュートラルポジョンから引いたり戻したりしてピッチ操作を練習する.ピッチ操作に伴って,顔や身体の露出部に当たる風の強さや風の音が微妙に変わることが分かるはずだ.ただし,必要な時はいつでもトリムスピードに戻せるように,まずニュートラルポジションをしっかりと覚えてから,この練習を行うことが大切だ.練習場におけるスピードコントロールの目安は,ベースチューブをニュートラルポジションからこぶし一つ分動かす位の範囲である.

    ベースチューブをニュートラルポジションからこぶし一つ分以上押し出すと,翼は間もなく失速する.失速により機体がノーズダイブを落とすと,機体のコントロールが効かなくなり,低空では地面に激突する恐れがある.したがって,練習場でのフライトにおいては,フレアの直前を除きニュートラルポジションからベースチューブを押し出さないようにする.

    B5-6 90 度旋回

    ポイント

    ・旋回の開始と終了を意図した通りに行う.
    ・適切な速度で安定した旋回を行う.

    安定した直線飛行ができるようになったら,いよいよ旋回 (ターン) の練習を開始する.旋回は高々度フライトに不可欠の技術であり,操作の基本をしっかりと身につけることが必要だ.

    直線飛行を保持するための修正動作は,機体の傾きと逆方向に身体を移動することだったが,旋回を始めるためには,機体が直線飛行をしている状態から体重を旋回方向に移動する.この動作を旋回の開始動作あるいはターンイニシエーションという.

    旋回を始めるに当たっては,まずベースチューブをニュートラルポジションからわずかに引き込んで加速するとともに,旋回方向に顔を向ける.加速するのは旋回の開始に必要な速度を得るためである.また,顔を旋回方向に向けるのは,身体の移動を容易にするとともに,旋回方向に他の機体がいないかどうかを確認する意味を持つ.

    次に,旋回方向を見ながら身体を旋回方向へ平行移動する.これにより,機体が傾いて旋回を始める.
    機体が旋回し始めたら腕の力を抜こう.すると,旋回方向に移動していた身体は自然にコントロールバーの中央に戻る.また,引き込んでいたベースチューブも前方へ移動する.身体を横に移動するのは旋回のために機体を傾けることが目的であり,機体を傾けた後も身体を移動位置に保っていると機体の傾きがどんどんきつくなってしまう.
    機体のロール方向の傾きをバンクといい,その角度をバンク角という.機体がいったん旋回に入ったら,身体をベースチューブの中央に戻しても,バンク角は変わらずに機体は旋回を続ける.このように安定した旋回をコーディネートターンという.
    旋回中は滑空速度が増加する.これは,遠心力が体重が増した場合と同様の作用を機体に及ぼすからである.力の釣り合いを保つために翼はより多くの揚力を発生させようとする.そのために,旋回中の機体の対気速度は直線飛行時より速い.また,同じコーディネートターンでもバンク角が大きいほど対気速度は速くなる.顔に感じる風の強さや風の音で直線飛行と旋回中の対気速度の違いを感じ取ろう.

    旋回中は旋回の内側方向を見る.つまり,機体がこれから進む方向に視線を向けるようにする.

    さて,旋回によりノーズの向きが 90 度近く転じたら,視線を接線方向に戻し,ベースチューブを再びわずかに引き込みながら,身体を旋回と反対側,つまりハイサイドに移動する.これにより,傾いていた機体は水平に戻るので,腕の力を抜いて,身体をベースチューブの中央に戻し,再びニュートラルポジションで直線飛行を行う.

    直線飛行に戻す際にいつまでも腕に力を入れていると,機体は水平を通り越して逆に傾いてしまうので,オーバーコントロールにならないように注意する.オーバーコントロールを避けるには,機体の傾きが水平に戻る直前に力を抜くことが必要だ.

    コーディネートターンは旋回の基本なので,スムーズなコーディネートターンが行えるように何度も練習する.また,左右どちらの旋回も同じようにできるようにする.左右の旋回でばらつきがある場合には,旋回操作だけでなく,操作時の視線の方向もチェックする.

    なお,旋回練習においてはノーズが風下を向かないように気をつける.ノーズがいったん風下を向くと旋回からの回復に時間がかかり,斜面に衝突する恐れかある.

    B5-7 左右連続旋回

    ポイント

    ・スムーズな切り返しを行う.
    ・左右の旋回を等しいバンク角,等しい滑空速度,等しい旋回角で連続して行う.

    決められた位置で 90 度旋回ができるようになったら,左右の連続した旋回を練習する.最初は左右の旋回角度が 30 度程度のゆるい S 字形のフライトパスを描くように飛ぶ.

    今までの旋回と異なる点は,旋回からの回復動作のために身体をハイサイドに移動した状態で,機体が反対側に傾くまで移動状態を保つことである.このように,機体を水平位置を超えて逆に傾けることを旋回の切り返しという.機体が逆方向に傾きはじめた後の操作は通常の旋回と同じである.左右の旋回を等しいバンク角,等しい滑空速度,等しい旋回角で行うことを心がける.旋回方向に得意,不得意があるとなかなか左右の旋回が同じにならない.また,翼を逆向きにバンクさせることに気を取られると,切り返し動作から身体を戻すのが遅れて反対側の旋回のバンクがきつくなってしまう.一連の操作を滑らかに行うことがこの練習のポイントだ.

    ゆるい S 字ターンができるようになったら,旋回角度を徐々に大きくして行き,45 度の旋回角度で連続旋回ができるようにする.

    B5-8 ランディングアプローチ

    ポイント

    ・旋回による着地場への進入高さや進入方向の違いを覚える.

    ・ファイナルアプローチに至るフライトパスを想定し,想定した通りに飛行する.

    S 字飛行ができるようになったら,S 字飛行を使って着地点への進入高さと方向をコントロールすることを覚えよう.

    高々度飛行では,決められたランディング場内に安全に着地するために,着地操作に先だってランディング場への進入方向や進入高度を適切にコントロールすることが不可欠である.進入とは着地を行うべく直線飛行で着地場に向けて最終的な滑空を行うことであり,別名をファイナルアプローチという.そして,ファイナルアプローチを適切な地点と高度で開始できるように,旋回によって高度と位置を調整する.旋回においては直線飛行より長い距離を飛ぶことになり,また旋回にともなう高度のロスもあるので,旋回を行うと同じ地点に直線飛行で到達するよりも高度ロスが大きくなる.この違いを利用して,目標とする着地点に風に正対してランディングできるように,旋回や S 字飛行を用いて進入開始の位置と高さをコントロールする.このような着地場に進入するためのフライトパスの取り方を総称してランディングアプローチという.

    適切なランディングアプローチを取るためには,テイクオフ前に風の強さや方向に合わせて入念なフライトプランを立てることが必要だ.

    B5-9 ファイナルアプローチ

    ポイント

    ・適正な速度を保ってファイナルアプローチを行う.
    ・アプローチの進路をまっすぐに保つ
    ・風に応じてフレアの強さを変える.

    ファイナルアプローチでは手をベースチューブからダウンチューブに持ち換えるが,この時の機体の飛行速度はトリムスピードである.ダウンチューブを持った状態でも,胸を前に出すようにして身体を前方に移動することにより,ある程度の範囲で加速することが可能であり,ファイナルアプローチを安定させるためにもダウンチューブに持ち変えた後に多少の加速を行うことは望ましい.一方,トリムスピードを越えてコントロールバーを押し出すことは,失速の危険があり,また機体コントロールの効きも悪くなるので,ファイナルアプローチではフレアをかける直前までトリムスピード以上に減速しないようにする.一般に,ダウンチューブを持った状態でスピードコントロールできる範囲は,ベースチューブを持った状態より狭い.

    ファイナルアプローチにおいてはすでに地面と機体との間隔が小さいので,修正動作以上のロール動作を加えることは難しい.無理をして機体をターンさせようとすると翼端が地面に接触してクラッシュしてしまう.

    以上の理由により,ファイナルアプローチでは機体の進路や速度を大きく変えることは困難である.つまり,ランディングの精度はファイナルアプローチを開始する位置と高さでほぼ決まってしまう.言い換えれば,ランディングの精度はファイナルアプローチを開始する前のフライトパスの取り方で決まる.ファイナルアプローチの役割は,フレアに至るまで機体を安定してまっすぐに飛ばすことである.この違いを良く理解しておこう.

    ファイナルアプローチの最後にフレアを掛けることは既に学んだ通りだが,フレアの掛け方は,風の強さによって異なり,風が弱いほど,力強いフレアが必要になる.いつも同じフレアのかけ方をしていると,風が強い時には後ろにひっくり返ってしまったり,風が弱い時にはフレアが十分に効かずにノーズクラッシュするなど,足からきれいに着地することができない.

    ファイナルターンの失敗やファイナルアプローチ中の風向の変化などにより,風に正対したファイナルアプローチを取れないことがある.このような場合にファイナルアプローチの中で無理に旋回してはならない.機体が風に正対していなくても,機体を水平に保ってしっかりとフレアをかける.

    B6-1 機体各部の機能と取扱い

    ポイント

    ・機体の各部の機能を理解し,機能を損なわないように取り扱う.

    機体に作用する荷重の支持

    飛行中の機体に重力,揚力及び抗力が作用することは既に学んだが,これらの力の作用の結果,機体の各部に様々な力が作用する.

    例えば,翼に作用する抗力のためにスパーには後ろ向きの力が作用する.この力に抗してスパーを支えるクロスバーには大きな圧縮荷重が作用する.クロスバーが機体の骨組みの中で最も太いのは,この大きな圧縮過重に耐える必要があるからである.

    一方,中間部をクロスバーに支持されたスパーには翼端を後方へ引っ張る方向の曲げ荷重が作用する.スパーはこの曲げ荷重に抗して翼のリーディングエッジを維持する役割を持つ.

    また,翼に作用する揚力は両翼を上方に持ち上げようとする.この力に対抗してロワーリグのサイドワイヤーがスパーをあるべき位置に保持している.サイドワイヤーはダウンチューブの下端に取り付けられているため,サイドワイヤーの張力はベースチューブに引張荷重を及ぼす.

    クロスバーはキールに固定したワイヤーで後方へ引っ張られている.クロスバーは若干の後退角をもっているため,クロスバーに圧縮荷重が加わると,キールのこのワイヤーの固定点とノーズの間の部分には圧縮力が作用する.キールにはさらにパイロットの重量とセールの揚力とが直角方向に作用するが,これらの個々の力の作用点が異なるためにキールには曲げ荷重も作用する.

    簡単に言えば,クロスバーは圧縮荷重を,スパーは曲げ荷重を,ベースチューブは引張荷重を支持し,キールは様々な荷重を支持している.

    機体の飛行中は,機体が裏返しになった場合や,急激なノーズダイブなどの特殊なケースを除いてアッパーリグやキングポストには荷重が作用しない.一方,機体が地上に置かれた状態では,翼の重量をアッパーリグとキングポストが支えている.

    ハンググライダーの各部材の強度は,もちろん負担すべき荷重に十分に耐えるように設計されているが,部材に曲がり,傷,凹みなどの損傷が生じると,必要な強度が得られなくなったり,機体のバランスがくずれてまっすぐ飛ばなくなったりする.部材の損傷はクラッシュした時だけでなく,機体の組み立てや分解,運搬における不注意な取り扱いによっても起こる.したがって,ハンググライダーの取り扱いに当たっては機体を傷めないよう十分に注意するとともに,損傷を発見した場合は損傷した部材を交換しなければならない.

    セールとバテン

    セールは揚力を発生する唯一の部材であるが,揚力発生に伴って飛行中のセールには常に張力が作用する.したがって,セールには張力の作用下でも伸びの少ないダクロンなどの材料が使用される.また,揚力発生のために,セールはできるだけ空気を通さないことが望ましい.セールのしわや折り目は揚力発生に必要なスムーズな空気の流れを阻害するとともに,生地を傷めて空気を通しやすくするので,機体をたたむ際はセールにできるだけしわや折り目ができないように,セールをリーディングエッジの内側に巻き込むようにして収納する.

    バテンは,セールが揚力発生に適した翼断面形状を維持できるようにカーブしている.飛行中はセールの張力のためにバテンには常にカーブを押しつぶす方向の力が作用する.バテンは曲がりにくい材質で作られているが,長期間の使用により少しずつ変形するので,バテンが正しい形状を保っているかどうかを時おりバテンシェイプ図 (正しいバテンカーブを紙に記したもの) でチェックし,バテンカーブがパテンシェイプ図からずれている場合は,パテンシェイプに合うようにバテンを曲げ直す.バテンを曲げ直す際は,ひざなどにバテンを押しあてて少しずつ曲げを加える.固いものに押しあてるとバテンを傷つけたり,修復困難な局部的な曲がりがついてしまう.
    コントロールバー

    コントロールバーは衝撃吸収のために,わざと強度を落としていることは既に述べた通りである.しかし,いったん曲がったコントロールバーは強度がさらに低下しているので交換しなければならない.軽度の曲がりは曲げ直して再使用しても良いが,曲げ直しによって曲げ直した部分に細かいしわができたり,曲げ直した部分が白っぽく変色したら,強度が低下しているので交換しなければならない.一般にこぶしひとつ分以上に湾曲した場合は交換が必要である.

    翼のウォッシュアウトと後退角

    ハンググライダーの翼のアタックアングルはキール近くで大きく,翌端で小さくなるように作られている.このようなアタックアングルの違いをウォッシュアウトと言う.このように翼の各部によってアタックアングルを変えるのは,失速特性を緩やかにするためと,ピッチ安定のためである.ベースチューブの押し出しにより翼のキールに近い部分が失速した時でも,翼端がなお揚力を産み出していれば,機体はすぐにはノーズダイブに陥らない.

    また,ハンググライダーの翼は翼端に近づくに従って,翼が後ろに下がる後退翼を採用している.ベースチューブを押し出すとウォッシュアウトのために翼の揚力の発生中心は翼端側に移動する.後退翼ではこれは揚力の発生中心が後方へ移動することを意味する.したがって,ベースチューブを押し出すと,ベースチューブはニュートラルポジションに戻ろうとする.逆にベースチューブを引き込んだ時には,翼のキールに近い部分が主に揚力を発生させる.後退翼ではこれは揚力の発生中心が前方へ移動することを意味する.したがって,ベースチューブを引き込むと,ベースチューブはニュートラルポジョンに戻ろうとする.このようにベースチューブがニュートラルポジションに戻ろうとする力をバープレッシャーという.バープレッシャーは安定したピッチコントロールに不可欠な要素であるが,バープレッシャーはウォッシュアウトと後退翼によって生み出される.

    翼の後退角度を後退角という.これは図に示すようにノーズ角と対をなす表現であり,ノーズ角の大きい機体は後退角が小さく,ノーズ角が小さい機体は後退角が大きい.ハンググライダーのノーズ角は一般に 110 - 130 度である.後退角に直せば 25 - 35 度ということになる.

    ウォッシュアウトリミッターとラフライン

    通常の飛行においては,ウォッシュアウトは空気の流れによって保持されているが,例えば激しい失速などで機体が大きくノーズダイブした時には空気の流れがウォッシュアウトをつぶそうとすることがある.ウォッシュアウトリミッターは,このような場合でもウォッシュアウトを強制的に保持する機能を持つ.ノーズダイブした機体がノーズを垂直線を越えて転回することをタッキングという.タッキングは機体の破壊に結び付く非常に危険な現象であるが,ウォッシュアウトリミッターはウォッシュアウトを保持することでタッキングに陥る前に機体を引き起こす (ノーズを持ち上げる) 役割を果たしている.なお,タッキングからノーズがさらに転回して機体が前転状態となることをタンブリングという.

    ラフラインは,飛行中の翼のトレーリングエッジが一定以上に下がらないように規制することで,同様の役割を果たしている.

    ウォッシュアウトリミッターもラフラインも通常時の機体の滑空性能には寄与しないが,タッキングの防止というフライトの安全に欠かせない役割を担っている.

    ビロウシフト

    飛行中のセールを後方から眺めると,左右の翼のセールがそれぞれ上に向かって膨らんでいることが分かる.この膨らみをビロウという.フレキシブル翼のハンググライダーは飛行中に機体を左右どちらかにロールさせようと体重を移動すると,ビロウの大きさが体重の移動方向の翼で大きくなり,反対側の翼で小さくなる.このビロウの変化をビロウシフトという.ビロウが小さくなると翼のアタックアングルが大きくなる.ビロウの小さい翼はビロウの大きい翼より大きな揚力を発生させる.この両翼の揚力の違いが体重移動による機体のロールを助ける.

    B6-2 滑空速度

    ポイント

    ・ハンググライダーの様々な速度について知る.

    最良滑空速度

    機体の滑空比が最大となる対気速度である.滑空比とは機体の水平速度と沈下速度の比をいう.この比が最大となる時の対気速度を最良滑空速度という.最良滑空速度は平たく言えば無風条件で機体が最も遠くまで飛ぶことのできる速度である.ベースチューブを最良滑空速度に対応する位置に保持することで,機体は最良滑空比で飛行する.最良滑空速度はトリムスピードより時速にして 5-10km 速い.滑空比は機体に作用する揚力 (Lift) と抗力 (Drag) の比 (揚抗比あるいは L/D) に等しい.そのため最良滑空比はベスト L/D とも言われる.フレキシブル翼のハンググライダーの最良滑空比は 1:8 から 1:11 程度である.

    最少沈下速度

    機体の沈下率が最も小さくなる対気速度をいう.沈下率は機体が単位時間当たりに失う高度であり,m/ 秒の単位で表示される.ハンググライダーの最少沈下率は 1m/ 秒弱であり,最少沈下速度は一般にトリムスピードより時速にして数 km 遅い.

    トリムスピード

    すでに説明したように,ニュートラルポジションにおける機体の対気速度をトリムスピードという.ニュートラルポジションはスイングラインの機体への取り付け位置によって変化するが,通常はトリムスピードが最少沈下速度と最良滑空速度の間に位置するように,スイングラインの取り付け位置を設定している.したがって,ベースチューブをニュートラルポジションより少し引き込んだ位置で最良滑空速度が得られ,ニュートラルポジションよりわずかに押し出した位置で最少沈下速度が得られる.ニュートラルポジションはバープレッシャーがゼロになるので,感覚的に把握することができるが,最良滑空速度も最少沈下速度も身体で直接感じ取ることはできない.これらの速度はベースチューブのニュートラルポジションからの引き込み量や押し出し量として経験的に認識することしかできない.最良滑空速度や最少沈下速度に相当するベースチューブ位置を正確に把握しようとすれば精密な計器が必要である.

    トリムスピードはスイングラインの取り付け位置を変えることで調整することができる.取り付け位置を機体の前方へずらすとトリムスピードは遅くなり,機体の後方へずらすとトリムスピードは速くなる.

    失速速度

    アタックアングルの増大により翼の上面を流れる空気の流れが層流を形成できなくなり,乱流に変わることを翼の失速という.しかし,ハンググライダーの翼はウォッシュアウトのためにすべての部分が一様に失速するわけではない.翼のキールに近い部分をルート部というが,ルート部は翼の中で最もアタックアングルが大きく,したがって対気速度が低下するとまず最初に失速する.ルート部は最小沈下速度ですでに失速を始めている場合もあるので,ハンググライダーでは失速速度を定義することは難しい.

    一般には翼の発生揚力が機体やパイロットに作用する重力を支えきれなくなって,ノーズダイブを始める速度を失速速度と呼ぶことが多い.一般には最少沈下速度よりわずかに遅い速度でノーズダイブが起こる.

    ノーズダイブの結果,翼のアタックアングルが小さくなると翼全体が再び揚力を発生させる.すべてのハンググライダーはこのように自ら失速から回復するように設計されている.しかし,低空でノーズダイブを起こすとそのまま地面に衝突してしまうので,練習場におけるフライトでは機体を失速させてはならない.

    翼の一部が失速すると様々な現象が現れるので,ノーズダイブが起こる前に失速の始まりを身体で感じ取ることができる.まず,機体がスムーズに滑空せず,ロールコントロールに対する反応が鈍くなる.また,翼の一部で失速が始まると乱流の発生のためにセールに微細な振動が発生する.気をつけていればこの振動をベースチューブを通じて感じ取ることが可能だ.顔に感じる風圧や耳で感じる風の音も弱くなる.こうした失速の兆候をいち早く感じ取れれば,機体がノーズダイブを起こす前にベースチューブを引いて失速を回避することが可能である.

    パイロットの体重と対気速度

    同じ機体に体重の重いパイロットが乗る場合には,体重の軽いパイロットが乗る場合より,機体は滑空に必要な力の釣り合いを得るために大きな揚力を発生させる必要がある.そこで,機体は大きな揚力を発生させるためにより速い対気速度で飛行する.そのために,トリムスピードはパイロットの重量が増すにつれて増加する.同様に失速速度,最少沈下速度,最良滑空速度もパイロットの重量とともに増加する.

    翼面荷重

    機体,パイロット,諸装備を含む飛行総重量を翼の面積で割った値を翼面荷重という.例えば飛行総重量が 100kg で翼面積が 13 平方 m の機体で飛行する場合の翼面荷重は 100/13=7.7(kg/m2) となる.翼面荷重は機体サイズを選択する際の目安として用いられる.

    B6-3 旋回のしくみ

    ポイント

    ・機体の旋回の仕組みを理解する.

    機体はなぜ旋回を始めるか.

    機体を旋回させために身体を旋回方向へ移動すると,左右の翼に作用する力のバランスが崩れ,身体を寄せた側の翼が下がり,機体が傾く.機体の傾きに伴い,揚力の向きが図のように傾斜する.その結果,傾斜した揚力と,重力との合力による新たな力が図の向きに作用する.この力のために,機体は傾斜方向へと横滑りを起こし,横滑りによって機体の進行方向が斜め下向きに変化する.この進行方向の変化の結果,下側の翼には上側の翼より大きな抗力が作用する.この抗力の違いによって,下側の翼の進み方が上側の翼より遅れるためにノーズが旋回方向を向く.

    ハンググライダーの後退翼は旋回開始に必要な抗力の違いを産み出す上で重要な役割を果たしている.

    [揚力の傾きを示すイラスト追加]
    機体が旋回を始める仕組みは以上の通りだが,機体が旋回を始めた後に横滑りを止めてコーディネートターンの状態にするには,以下に説明するピッチコントロールが必要である.

    旋回中の力の作用

    機体がいったん旋回を始めると,機体とパイロットに遠心力が作用する.機体を安定して旋回させ続けるには,糸に錘 (おもり) を付けて振り回している場合と同様に,遠心力と等しい逆向きの向心力を機体に作用させなければならない.機体はこの向心力を揚力の傾斜によって産み出す.コーディネートターンにおいては図に示すように,重力と遠心力の合力と揚力とが釣り合った状態となる.この釣り合いを得るためには,機体は揚力を増加させなければならない.そこで,機体が旋回を開始したら,コントールバーを押し出して,翼のアタックアングルを増すことで揚力を増加させる.これにより,機体に作用する力が均衡すると,機体は横滑りを止めてコーディネートターンを開始する.浅いバンク角の旋回では必要な押し出しの量もほとんど意識しなくて良いくらいに小さいが,バンク角が大きくなるにつれて大きな押し出しが必要になる.

    ちなみに,バンク角 30 度でコーディネートターンをしている機体は直線飛行時の 1.15 倍の揚力を必要とする.バンク角 45 度では 1.41 倍,バンク角 60 度では 2 倍の揚力を必要とする.

    旋回中のベースチューブポジションと対気速度

    旋回中は必要な揚力が増加するために,コーディネートターン中の翼のアタックアングルは直線飛行時よりも大きくなる.これは,ベースチューブのニュートラルポジションが前方へ移動することを意味する.したがって,機体がいったんコーディネートターンに入ると,その後はベースチューブに特に押し出しの力を加えなくても,ベースチューブは直線飛行時よりも前方で静止する.コーディネートターンの開始に必要なベースチューブの押し出し量は,コーディネートターンと直線飛行のニュートラルポジションの違いに相当すると考えることができる.

    旋回中の機体の対気速度は直線飛行時の対気速度よりも速い.コーディネートターン中の力のつり合いの図を翼が水平になるまで傾けてみると,力の作用は直線飛行中の機体に体重のより大きいパイロットが乗った状態と同じであることが分かる.同じ機体に体重の大きいパイロットが乗れば対気速度が大きくなる.結果として,コーディネートターン中の機体の対気速度は直接飛行時よりも大きくなる.
    コーディネートターン中は,バンク角が大きいほどニュートラルポジションが前方へ移動し,同時に対気速度も大きくなる.直線飛行の対気速度はベースチューブのポジジョン,すなわちアタックアングルで決まるが,旋回ではこれにバンク角という要素が加わる.この違いを分かりやすく表現すれば次のようになる.

    直線飛行では,パイロットはピッチ操作により一定の範囲内で自由に対気速度を選んで飛行することができる.

    一方,旋回においてはコーディネートターンを続けようとする限り,パイロットが選択できる対気速度はバンク角で決まってしまう.浅いバンクで高速旋回をしたり,深いバンクで低速旋回をすることはできない.

    旋回中の失速

    コーディネートターンのベースチューブポジョンはバンク角とともに前方へ移動するため,ある程度以上のバンク角の旋回では,腕が一杯に伸びるまでベースチューブを押し出しても機体は失速しない.

    このようなことから,旋回中の機体は一般に直線飛行時に比べて失速しにくいが,浅いバンクで過大な押し出しを行えば直線飛行時と同様に失速する.したがって,旋回中も機体を失速させないようベースチューブの押し出し過ぎに気をつける.

    なお従来は,旋回中の失速は内側の翼端から起こるという,翼端失速の概念で旋回中の失速の説明がなされてきた.確かに旋回では内側の翼端の対気速度が最も遅いが,失速は速度の低下によって起こるのではなく,アタックアングルが過大になることで起こる.ハンググライダーの翼端はウォッシュアウトのために翼の他の部分よりもアタックアングルが小さいことを考えると,旋回中の失速が常に内側の翼端から発生するかどうかは疑わしい.

    バンク角と旋回効率

    コーディネートターンにおける旋回半径はバンク角が大きいほど小さく,対気速度はバンク角が大きいほど大きい.そのため,同一角度の旋回に要する時間はバンク角が大きいほど短い.一方,バンク角が大きいほど機体の沈下率も大きくなる.

    B6-4

    ポイント

    ・風の原動力は何かを知る.

    風を吹かせる原因はいくつかあるが,代表的なものを上げると次の二つになる.

    高気圧と低気圧

    風は高気圧から吹き出して低気圧に吹き込む.ただし,地球が自転しているために地球上の運動物体にはコリオリの力が働く.この力は,直進する物体を北半球では右方向にそらせる力として,南半球では左方向にそらせる力として作用する.結果として北半球では風は高気圧から時計回りに吹き出し,低気圧に反時計回りに吹き込む.南半球ではこの逆で高気圧から反時計回りで吹き出し,低気圧に時計回りに吹き込む.

    温度差

    地上付近で気温に差が生じると,高温部では上昇気流が発生する.することこの空気の動きを補うために,低温部にあった空気は高温部に移動し,風が吹くことになる.この時,高温部から上昇した空気は上空を反対方向に進んで低温部ヘ下降気流となって降り行き,対流現象を起こす.このような上昇風をサーマルと呼び,ハンググライディングでは高度獲得のための最も有効な手段として用いている.このような対流現象による風は高気圧と低気圧によって吹く風に比べると規模が小さいため,コリオリの力の影響は小さい.この他にも冷たくて重い空気が山の斜面に沿って滑り降りる重力風と呼ばれる風もある.

    B6-5 風の測定

    ポイント

    ・風向と風速の意味,目測の方法を知る.

    風向・風速とは

    風の吹いてくる方向を風向と言い,北から吹く風ならば北風と呼ぶ.風向は一般には,360 度を 16 等分した 16 方位を使って表示する.風速は秒速何メートルとか時速何 km といった単位で表す.

    風速の目測

    吹き流しの角度や動き,煙のなびき方などで風速を判断することができる.このためには,風力階級と呼ばれる基準を覚えておくと判断しやすい.ただし,風力や吹き流しや身体に感じる風は,風速ではなく風圧である.風速と風圧は比例せず,風速が 2 倍になると風圧は 4 倍になる.

    風力階級による

    B6-6 地形による風の変化

    ポイント

    ・地形による風の流れの変化を知る.

    前述の障害物による気流の乱れと同様に,風の流れは地形によって色々と変化する.

    吹き抜け

    吹き抜けとは地形によって風の流れが集まって,そこだけ強い風が吹くことをいう.これは大気が安定している時に特に多い.吹き抜けの起きやすい地形は次のようなところである.

    1.細い谷や,尾根の一部が切れ込んだあん部では,気流が切れ込み部分に集中するため,他の部分より風速が強い.
    2.稜線が平らになった尾根の真上の風上側には上昇風帯がある.この上昇風はリッジリフトと呼ばれ,ハンググライディングでは高度獲得と滞空のための手段として用いられる.しかしながら,稜線付近ではふもとから稜線までの風が集中するために風速が強まる.
    3.孤立峰の側面も風が回り込むことにより,風の流が集中して風速が強まる.同様に風向きに直角な尾根の先端部も風が強い.
    ローターとウインドシャドウ

    前出の障害物によるローターと同様に,山や尾根の風下では強風時には広範囲に渡ってローターや乱気流が発生する.ただ,風下側の斜面の一部では一時的に無風になることがある.これをウインドシャドウという.日の当たっている斜面がウインドシャドウになると,そこを熱源として良いサーマルが発生することがあるが,風が強いと非常に荒れたサーマルになるため低高度では危険を伴う.

    B6-7 安定した風と不安定な風

    ポイント

    ・風の吹き方,風の息はどうして起こるのかを知る.

    同じ風向,風速をもつ風であっても実際の大気中ではいろんな吹き方をするため,それをよく知っておくことが重要である.

    安定な風

    安定な風とは風向,風速に乱れが少ない状態の風をいい,大気の状態が安定していて空気が上下方向に混ざりにくい時に吹く.朝晩や曇天の時に多い.

    不安定な風

    不安定な風は,風向風速が変わりやすく,一定しない風を言う.大気の状態が不安定な時,空気は上下,左右ともに動きやすく大小様々な渦を伴う.この時の風向や風速の変化を風の息と呼ぶ.よく晴れた日中,サーマルが活発な時に吹きやすい風である.

    障害物によるローター

    風が障害物に当たると,その風下に渦ができる.この渦を俗にローターという.大気が不安定な時は,特にローターが増幅されるため要注意である.一方,大気が安定している場合のローターは,強さが増幅されることはないが,長い時間継続することがある.

    ウインドグラジェント

    上空から地表まで風速の分布を調べると,ある高さから下で風速が急に弱くなっていることが多い.これをウインドグラジェントという.ウインドグラジェントがあると,ランディングアプローチ中に急に風がなくなり,グライダーが失速することがあるので注意が必要である.

    B7 B 級検定

    実技検定科目

    2 飛行準備・周囲警戒・テイクオフ
    6 45 度左右連続旋回によるランディングアプローチ
    8 ファイナルアプローチ (適切なフレア動作を含む)
    合格基準 : 教員が連続して 3 回の成功飛行を認めた場合に合格とする.

    学科検定科目

    JHF 出題の筆記または口頭による試験
    合格基準 : 正解率 70% 以上
    試験は教員が実施し,点数の不足する者に対しては再教育を行う.


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